[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
その時を動かしたのは、原因物質の妖精だった。
しばらく、俺の中の時は止まっていた。
その時を動かしたのは、原因物質の妖精だった。
“あ、アナタが変な人に見られないように最初に言っておくけど・・・
私の姿は、アナタしか見えないからね”
すぐに言葉を言おうとしたが、その事が真実だったら嫌なので少し戸惑いながら、
そして小さな声で言った。
「何で俺だけが見えるんだよ。そもそも・・・・・全てが何」
そんな俺の姿が可笑しかったのか、妖精はくすくすと笑いながら答えた。
“今は誰もいないから大丈夫だよ。
いろいろと説明したいから、アナタの家に連れてってくれない?”
受け入れるべきか、拒否すべきか。
この生物に会ってしまっては、もうどっちを選んでも大差ないと思った。
というか、そう思うしかこの現実を受け入れられそうになかった。
小さなため息一つ。
妖精を放し、背を向けて合図を送る。
何となく、妖精が笑っているような気がした。
俺の両親は共働きで、この時間には家にいない。
うるささ全開の双子の妹がいるが、部活があるので同じく留守。
途中で誰かが帰ってきたときに怪しまれないよう、自分の部屋に入った。
一人部屋には十分な広さ。
学習机に椅子にベッド、本棚。そして買ってもらったばかりのパソコンが置いてある。
部屋はそんなに掃除をしていないが、片付けはしているので見た目きれい・・・だと思っている。
妖精はうろうろと動き回っていたが、やがて机にちょこんと座った。
その机に荷物を置き、そのまま椅子に座る。
「それじゃ聞かせてもらおうか」
“うーん・・・そう言われてもどこから話せばいいかなぁ?”
自分から説明するとか言っておきながらこの妖精は・・・・・
やっぱり・・・俺の選択は間違っていたのか?
俺の普通の人生、どこから狂い始めた!?
“おーい、よく一人の世界に入ってるよねー。
悩んでるみたいだから、聞きたいことがあったら言って?”
そうだ、悩んでいても仕方がない。
聞きたいことは山ほどある。
「まず、お前は何だ?妖精・・・ってことだけど、幻想の世界の妖精とは違うよな?」
“そうだよ。
私達妖精は・・・・・・簡単に言えば『人間に生まれ変わる前の種』ってトコロかな?”
「種?」
“そ。そもそも私達妖精は、もとは人だったの”
「人が妖精になるのか?」
“そう急かさないで聞いて。
人は死んだら生まれ変わる。それは分かるかな?”
そのことはよく言われてることだ。
実際、生まれ変わりの証拠となるべき事例がある。
“その、生まれ変わる時に神様に選ばれた人が私達妖精なの”
「つまり・・・神様に選ばれたラッキーな人?」
“・・・と、思いたいけどね・・・・
選ばれた人は生まれ変わるための課題を出されて、出来なければ人には生まれ変われないの”
「ん?その時に選ばれなかった人も生まれ変われるんだよな?
何となくおかしくないか?」
“妖精に選ばれて課題をクリアすれば、生まれ変わった時に人一倍運の強い人になれるんだって。
人間界で宝くじが当たりまくる人は、もしかしたらそういう流れで生まれ変わったのかもしれないってコト”
「あー、なるほど・・・・なるほど?」
選ばれなくても人に生まれ変われる。
運が強いとか弱いとかよりも、普通に生きていられるし、そんなに支障があるわけじゃないと思う。
しかし神様に選ばれた人は、課題をクリア出来なければ生まれ変われない。
何ていうか・・・・・・
“あ、やっぱりおかしいって思った?”
「そもそも、何でそんなものがあるんだ?
無条件にみんな生まれ変わるって訳にはいかないのか?」
“多分・・・試練みたいなものだと思うな。
神様に選ばれた人っていうのが、生前にすごく悪いことをした人や強い未練がある人なんだって”
「じゃあ・・・お前も何かしたとか、未練があったとかなんだ」
“それは分からないの。
死んでその世界に逝った時に、生前の記憶は全て削除されるの。
でも、やっぱり性格っていうものは出るみたい”
悪いことをした人。未練が強すぎる人。
そういう人は、簡単には人に生まれ変わらせないってことなのか。
生前の記憶を削除されても性格が表れるということは、生まれ変わった後、また同じことを繰り返す可能性がある。
それを防ぐ策なのだろう。
“ここまでは分かったかな?”
なんだか思っていたよりも複雑だ。
だが、最初より興味が出てきた。
「あぁ。んじゃ、次。
その、妖精がすべき課題って何だ?」
“それは、『人間界で心のカケラを集めること』”
「心のカケラ?それって物なのか?」
“物っていうか・・・よく分からないんだけど、優しさとか怖さとか、人格を作る要素なんだって。
それをとにかくたくさん集めたら、人に生まれ変われるの”
「でも、そんな非現実的なものがここにあるのか?」
妖精が探すものだから、おそらく人には見えないものなのだろう。
ある、と言われても確かめようがないが。
すると妖精は、はっきり、あると答えた。
それは、意外にもどこにでもあるものらしい。
人の心の奥にあり、その感情が大きく膨らみ、外に出てきたものがそのカケラ。
感情が収まると消えてしまうので、その前に妖精自身が取り込むことで得られるということ。
実は、俺が妖精と会った時も出てきていたそうだ。
「じゃあその時に、俺の心のカケラを取り込んだのか?」
“ううん。見えるけど、人と契約していないと取り込めないの。
つまり、人と協力して集めなきゃいけないって事”
その言葉を聞いて、無意識に目線をそらしていた。
人と協力して心のカケラを集めなければならない。
そして人である俺は、なぜか妖精が見える。
いろんな事情も聞いている。
ということは話の流れ的に・・・・・・・
“だ・か・ら、私と契約して一緒に心のカケラを集めて欲しいの!”
大きな大きなため息を一つ。
もしかしたら今、何らかの心のカケラが出ているのではないだろうか。
「契約するのが俺だとして、何で俺はお前が見えるんだ?霊感なんて全くないけど」
それを一番先に聞くべきだった。
この妖精の姿は俺しか見えない。
今までにそんな不思議な体験なんてしたことないし、霊感もないから変なものも見たことがない。
“むぅー、霊と妖精を一緒にしないでよ。
それに何で私が見えるのかって聞かれても・・・・神様は教えてくれなかったし”
そう言うと、腕組みをして何やら考えているようだ。
“そう!一言で言うと運命!まさに運命の出会いだよ!”
運命というものは決まっていて、変えようがない現実。
そう思うときもあり、たまにはその言葉を口に出したりしていた。
だが、こんなにも運命に逆らいたいと思ったことはない。
妖精がいる神様というのが本当にいるのなら、直接会って文句を言いたい。
“ねぇお願い。私と契約して”
「それを俺が拒否することも出来るよな?」
すると妖精は、少し残念そうに小さく頷いた。
“でも・・・・出逢ってから一週間以内に契約が出来ないと、生まれ変わるのがかなり先になっちゃうの。
だからお願い!契約すれば運も上がるから!”
運が上がるって言われても、妖精に出逢った時点で運が下がったように思えるのだが・・・
しかし、放っておけないと感じた。
今の普通の生活が変わるのも、悪くないかもしれない。
それに契約するかどうか選べるが、妖精が生まれ変われるかどうかを決める権利はないと思った。
人に生まれ変わりたいのに、面倒くさいからという理由だけで拒否するのは、あまりにも残酷なことだ。
まっすぐ俺の目を見つめている妖精に、軽く微笑んで答えた。
「俺の人生をめちゃくちゃにしない程度で、な」
妖精は今まで以上の笑顔を見せ、俺の顔にくっついてきた。
“ありがとうありがとう!一緒に頑張ろうね!”
「そんなにくっつくなって・・・
で?契約っていうのは何をするんだ?」
“あ、それは簡単だから安心して。私はアナタの名前を知る、そしてアナタは私に名前をつけるの。
という事でアナタの名前は?”
名乗ったが、漢字を知りたいということだったので、紙に書いて見せた。
「これで久遠那智」
“那智、ね。いいなぁ・・・素敵な名前だね。
それじゃあ私の名前を考えて”
名前か・・・・・
呼びやすいものがいいが、何かに名前をつけるのは深く考えてしまう。
その時ふと、この前部活で見た原石の名前が浮かんできた。
「・・・翡翠」
“ヒスイ?それが私の名前??”
翡翠とは宝石の一つで、玉の中で緑色のものを翡翠と呼んでいる。
実際には白い石の方が多いが、やはりその名前を聞くとその名の通り、翠を連想させる。
妖精の瞳も翡翠色。
呼びやすいし、綺麗だからいいかもしれない。
“宝石の名前なんだ!
ヒスイ、翡翠・・・・・うん、いい感じ♪”
こうして契約成立。
那智に、先のまったく見えない未来の道が開かれた。
実はまだまだ説明していないヤツがあったりして(ぇ)
それについては次回で。
ということで、次回もこの小説を更新します。
そういえば・・・本物の翡翠を見てみたいと思った今日この頃。
アメジストしか見たことがないんだよねぇ・・・
04 | 2024/05 | 06 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | 4 | |||
5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 |
12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 |
19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 |
26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 |
自己満足なサイト万歳(笑)